携帯についているクマは、
ある日突然つけられたものだ。
これただでもらったからあげる〜、っと。


クマのくせにピンク色というのはどうも持ち主の性にあわないのだけど、
いじるのに便利だしなんだか首が曲がっている気がしてたので、折檻して?遊んでいたらずいぶんやわらかくなった。最近はちゃんとお座りもできる。近いうちに彼の足は取れるだろう(!)。

そのクマ、最近までBvlgariのpour homme(だっけ?)の香水をつけていた。
なんのことはない、クマをくれた人がよくつけている香水だ。持ち主が、部屋にあった香水を勝手に失敬してつけておいた。当のクマははっきり言って臭がってた!

ところでそのクマ、今日は香水を変えてみたらしい。持ち主がボストンに行く夏に、部活のともだちからもらった香水。あれから5年たとうとしているのに、香りは衰えない。ブルーの幾何学的な入れ物に入ってる、さわやかな香り。感じるだけでボストンにいた夏を思い出してしまうから記憶っておそろしい。そしてクマのくせに、なによりもピンクのクマのくせに、あの夏を思い出させる力があるなんてことを持ち主は認めたくないのである。

3週間も経たないうちに、クマは携帯からはずされた。持ち主がピンク色に耐えられなかったから。そしてくれた人との関係をすこうしクリアにして一人で立ちたいと感じた夜だったから。依存症の気が見えたらしい。折檻されすぎて、クマはもはやお座りしかできない。今は母親から譲られた化粧台の引き出しに封印されている。彼女が一人でしっかり立ち直れたら、引き出しはひらくかも。

クマの代わりに、ある日封書で送られてきた赤い金魚が配置についた。