モスクワのシェレメチェボ空港にて。
成田空港から気になっていて、トランジットのパスポートコントロールでやっと話しかけたその人は、今夜はチューリヒに泊まり、明日「わざわざその為だけに行かないと見られない」近代建築を見に行く、と言った。建築士、といった。
名前も、連絡先も、聞かなかった自分に後悔する。
ほんとに、女は感じる力を開いてないと何も生まれない。東京の埋め立て地で硬くなった身体は後悔ばかり。両替に行った帰り、カフェでコーヒーを買い、ゆっくり息をして硬く閉じた勘をゆっくりひらく。
翌、待ち合わせして、エレバンに向かった。結局やっぱりその後3日も、後悔した。