新学期新宿御苑

2018年09月05日

penguin.

penguin.さんと10年ぶりぐらいに電話をした。penguin.さんというのは学生時代の友人だった。

彼の初恋の相手がわたしらしい。(らしい、というのは後年、だいぶ後になってから、そういう告白を後出しでされた)

受験勉強のときにわたしはpenguin.さんと時々食堂でうどんを食べていて、べつにつきあっていたわけでもないし一緒に帰るとかも全くなかったのだけれども、高3だった私はpenguin.さんといずれ結婚する気がなぜか勝手にしていた。結局いまのところそういう状況には至っていなくて、わたしたちは別々の現実を生きている。

きのうのわたしはとある性的な過去の事象についてとても困っていて、頭が破裂しそうで、penguin.さんが民事の弁護士であることを思い出して、電話をしてみた。

電話番号はもうとっていなかったのだけれども、彼のSNSに電話番号が公開されていた。半年ぐらい前に自分とは関係のない件で電話をしたけど電話にでなかったから、根に持っていた。今回も電話にでてくれるとはおもっていなかった。

ヒトとしての彼が、というかわたしの古い友達としての彼が、女としてのわたしのもっている悲しい感覚は民事の問題としておかしいのかどうなのか、ということを冷静にきいてくれた。そういう感情を抱えていることや問題としておこすことはおかしくないといわれた。

まず今日電話をしてくれてありがとう、はなしてくれてありがとう。となんどかいわれた。10ねんぶりにせっかくpenguin.と話をしたのに私はそんなくだらない男からの遭ったみじめな事件の告白しかできなくてかなしかった。

弁護士としての人格の彼がわたしのもっているその問題にどのように対応しうるのかの提案をいくつかしてくれた。

それとは別に、私が抱えている負の感情を弁護士にお願いして慰謝料やら労力やら相談料やら文書作成料やらのお金に換算することでわたしが受けるであろう精神的ダメージも心配してくれた。

「だからなんとなくはじめから、この件を弁護士案件にすることはハルカにはどうも合わないとおもう。なぜかはうまく説明できないけれど。」

扉は開いていて、道案内はできる。どうしても、というならそういうことに強い先輩を紹介する。

ただ訴えたところでわたしがその事象を許せるかもわからないし、呼び出したところで相手が同じ土俵にのってくれるかもわからない。謝られたところで許せるかもわからない。これまでその対象とそういうことを話していてまったく話がかみ合わない、あるいは頭がおかしいなら、同じことの繰り返しになってもっと消耗する可能性もある。弁護士としての経験上としても男はそういう感覚がわからないし、ハルカの性格からしても、こういうのを顕在化して問題として扱うのはしんどいし、つらいとおもう。

ハルカが頭がおかしいわけではない。そのときNOと言わなかったことが合意であるとはいえない。証拠の有無で出せる証拠なんてたいした証拠でもない。その事象にたいしてどのように感じているか本人の気持ちが一番大事。

そういう問題をもっている自分と相対して世の中にもっと困っているひとがいるんだからそっちに労力とか時間とか使ってもらうほうがいい気もする、ということをいうと、まあそういう考え方もあるよね、ともいった。

penguin.が電話に出たとき、彼はハルカからの電話だからとちゃんと認識していた。ひさしぶり。といわれた。どうした、とも。

なんでわかったの、ときいたら、電話番号ずっと登録してそのままだった、といった。

もう二度と会わないのになんで電話番号をとってあるの、ときいたら、「このさきどうなるかわからんやん」といわれた。

わたしは長い間ずっとpenguin.さんのことをでくのぼうだとおもっていた。わたしが交通事故にあったときかれは弁護士の勉強中で、助けてくれるといわれたけど結局何もたすけてくれなかった。でもわたしが学生時代に泣いていた時にオートバイを飛ばして会いに来てくれた。

「基本的に自分は電話には出ないし、折り返さないから、『今夜電話に出たのは奇跡』」だったそうだ。

このさき必ずハルカからの電話に出たりメールに返信することをコミットできるわけではないけれど、なにかあったら連絡して、と。そういうキザなことをいわれたわけではないけれど、まあざっくりと、そういう趣旨のことをいわれた。

先月メールをしたときも「ハルカはさいきんどうなの」ときかれて、私は答えなくて、penguin.にひどいことをいろいろかいて、数日後にもういちどpenguin.はわたしに「どうなの」と聞かれたので「話したいことはいっぱいあるけど報告することはない」とひどい返事をしたけど、彼はまったく怒っていなかった。「ハルカと自分との関係性に限らず、いろんなことをひっくるめて、もちつもたれつだから。」というおじいちゃんみたいなことをいった。だからわたしは、おじいちゃんみたいだね、といった。

penguin.になんでわたしの夢にでてくるの、と聞いたら、どっちかが呼び出してるんだよ、と言った。どっちが呼んでいるんだろう。ときいたら、この場合どっちだろうね、といった。

10年ぶりとは思えない感覚ではなしをした。

penguin.に電話をかけたのが23時で、そのあと彼は最寄駅までの終電を逃して、ウチから5駅ぐらいのところにつく電車にのってたあと、またかけなおしてくれて、結局5駅分わたしと話して、おうちに歩いてかえって、その間ずっと結局3時すぎまで話をしてくれた。わたしたちは電話をおわらせることができなかった。切ったらもう次に話せるのが10年後ぐらいだったらいやだから、おやすみとか、ありがとうとか、電話を締める言葉に言いようがなかった。でも携帯を充電してないからもうすぐ電池がなくなるといわれて、結局その15分後ぐらいに電話は突然ぶちっときれた。かけなおしてみたけれど、でなくて、「ごめんけど、風呂にいく」、というメッセージが入っていた。おやすみとか、ありがとうとか、もう上手にいえないような気がしたので、ぶちっと電話がきれたのが今朝午前3時の電話の終わりで、それでよしとした。わたしは泣きすぎて顔が腫れあがったまま眠った。

わたしとpenguin.はたまにSNS上のメールをすることはあって、というか年に1度ぐらい、penguin.が私の夢に出てくるので、連絡をするとpenguin.は生きていて、ちゃんと日本のどこかで生活していて、でももうべつの生活をしているのでわたしはつねにつんつんした返事しかしないのだけれども。

でもpenguin.と私はもう別々の生活をしていて、ミラクルがおこらない限り現実生活ではもう会うこともないだろうし、と勝手におもって私はもうずいぶんと前に、10年ぐらい前に、彼の電話番号を消していた。

penguin.がわたしの電話番号をずっとずっと消さないでとってくれていた。わたしの持っている負の感情や去年経験した事象を問題と思ってはいけないのではないか、というじぶんのなかの否定感、相手がおかしくなってわたしを責めたかなしみについても、「ハルカはおかしくない」、といってくれた。

今朝までやっぱりわたしのあたまは破裂していて、弁護士さんの紹介をお願いしようか迷っていたのだけれども、よく考えてみたらpenguin.のその2つだけで、昨夜じぶんの頭が破裂していた事柄は、なんだかどうでもいい気も、してきた。結局その事件の相手よりも知り合ってからの18年のpenguin.のほうがわたしの人生にとってよっぽど、天と地ほどの差で大事で、その事実はどんなことがあっても覆らないから。ところで電話番号をとうに消したわたしと電話番号をとっていた(ほったらかしだった)penguin.、どっちの愛が深いのかしら。

coloro at 23:58
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