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サンクトペテルブルグに住んでいる。

今年の11月のサンクトペテルブルグはあっという間に氷点下15℃、日により吹雪となっている。

ちょっと近所まで買い物に出たとき、なんだか今日はあったかいなあ、とふと道路の気温表示を見たら、マイナス5℃だったりする。

私は神奈川県の育ちで、こちらロシアに住む前はこの氷点下の都市生活ってどんなものかとっても心配だった。

駐在の方や留学生の方のブログも読ませてもらったが、そもそもロシア生活をしている日本人の数も少ない。

ほんとうは毛皮とか持っていると良いのかもしれないけれど、短期滞在なのでそんなものを買う余裕はない。買っても、最近の東京の冬には暑すぎる。

今日は冬を2回(〜氷点下28℃)まで経験している私が着ていた服(女性)を書いておこうと思う。留学、駐在、旅行などで短期〜数年滞在の方の準備に役に立ちますように。

何を持っていくか、何を着るか、というのは先に留学したロシア語の戦友M嬢、N嬢、M姉、ロシア語の恩師でだんな様がサンクトペテルブルグ出身の愛先生、知人あつみさんなど、いろんな女性達から教わった。

指先、つま先、あたま、婦人科系をとにかく冷やさないように。


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もくじ

+5℃〜−5℃ :手袋、帽子、耳あて、カイロ、ハラマキ、薬、湯たんぽ

−5℃〜−15℃ : コート

−15℃〜−20℃:くつした、ソフトコンタクトレンズ、マフラー、ブーツ

−20℃〜−28℃:「はるか、散歩に出かけましょう。」

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+5℃〜−5℃
手袋

動かしやすさという点で断然革製がおすすめ。ラムまたは豚、中にフリース地。

モンベル社の2,500円ぐらいの、雪山で細かい作業(カメラを操作したり)ができるものもよかった。

指なし手袋の場合はかならず上からかぶせるミトンを持っていくこと

日本で良いものを無理して買って行かなくても、とりあえず持っているものを持っていく。だいたいサンクトペテルブルグやモスクワは地下鉄の駅前、駅前の地下通り、観光地で沢山出店が出ていて、美しい毛糸のミトンや革製の良いものを1,000円〜3,000円位で売っている。私はエストニアのタリンのクリスマス市で8ユーロ位で買った。

帽子

毛糸製。かならず耳まで隠れるもの。ロシアだけじゃなくヨーロッパはとにかく風が冷たい。

登山用としておでこと耳部分にファーがついたものが売っているが-25℃の地にがっつり行くとかでなければそこまでのものでなくてもいいと思う。

耳あて

帽子の上からするのであればよいのだが、耳あてだけだと無意味。頭が割れるように寒くなる。

カイロ

ロシアにカイロはほぼ売っていない。あるらしいというブログ記事を読んだことはあるのだが売っているのを見たことがない。使い捨てカイロを大量に持ち込む。またはオイル式の「ハクキンカイロ」を持ち込んで、オイルを現地で調達する。

ハクキンカイロというのはオートバイ乗りの友人に教えてもらったもので、ジッポライター等のオイルを入れて、ライターで火をつけるもの。ちょっとオイル臭いけれど安定して何時間もあったかい。

オイルはこれも地下鉄のキオスクや、お酒、タバコを専門的に売っている店で、ジッポオイルにこだわらなければだいたい1缶180ルーブル位で買える。

なおハクキンカイロは通常ライターと同じ扱いで、飛行機の預入荷物に乗せられない。日系の航空会社はホボ無理で没収される場合もある。未使用品を持っていくか、バラして中綿まで抜いていく(中綿を抜いたらどうやって入れ直すか、というのはyoutubeに誰かが載せてくれている)。自己責任で。ロシアの長距離列車はとりあえず現在のところ荷物検査が厳しくないので持ち込めた。

ハラマキ

毛糸のパンツ、絹のパンツ、あるいはハラマキ。+5℃以下になると女の子の場合、婦人科系を冷やしたり、気温の変化で腰をひねったり、膀胱炎とかヂになりやすくなるのでハラマキだけじゃなくて重ねられる(ブルマみたいな)パンツももっていく。カンガルーパンツというのもある。お腹や背中部分に、カイロを入れるポッケがある。



上に書いたような症状はある日突然なるので心配なら薬も持っていく。身体を冷やすこともそうだが、食べ過ぎると(特にパスタなど小麦系)なりやすくようだ。

メンソレータム、馬油、痔の薬、膀胱炎の薬、貼るカイロ、バンテリンなど

湯たんぽ
そういえばロシアで売っているのを私は見たことがない。ドイツ製のゴム湯たんぽを持参して真夏以外は7月も9月もずっと入れていた。



−5℃〜−15℃
子どもはスキーウエアのようなものを着せられている。

小さい子どもは全身ツナギのタイプを着ており、ちょっと成長すると上下別のものをきていて、それがちょっぴりオトナの証。

つららが凍りだす。屋根から落ちてくる雪やつららにも注意。

コート

ロシアのご婦人たちはソビエト時代の一張羅の毛皮をずっと着ている。美しい。しかしいつクリーニングにだしているのか不明で、気温が上がるとバスや地下鉄は毛皮と汗のにおいでもわっと臭くなる。

ダウンコートであれば東京の冬に着ているものでもまだ大丈夫かもしれない。エディーバウアーなどのちょっといいブランド。現地で買うなら中にきちんとダウンかフェザーの入った、ちょっと良いダウンコートを買う。ロシアで買ったダウンを見せてもらうと前のファスナーが二重になっており、防寒の役目となっている。いずれにせよ太ももまたはひざ上までの長さがあり、フードがあり、必ずきちんと前のファスナーが閉まるもの。10月のウクライナ(氷点下)で数日、ファスナーの壊れたコートを着ていたのだが、閉まらないと冗談抜きに死にかねない。

知人に聞いた話では日本人女性が以前氷点下の土地で暮らしていた場合、寒すぎて卵巣を手術したり、流産なども増えるということだ。やっぱりお腹と婦人科系を冷やしちゃいけない、といっていた。

モンベル社の登山用のズボン下、又は厚い綿タイツ。上からジーンズを履く。アウターは綿のタートルネックに厚目のトレーナー地か厚いカーディガン。風が寒い日は、厚手のワンピースを上からかぶる。

問題はロシアの部屋内はどこもあたたかいので、外出先でコートを脱いだ時もできるだけエレガントでいなければならないこと。

女性はみなオシャレなので子どもならともかく、いい年した女性がスキーウエア―とか日常的に着てると浮く、と愛先生が仰っていた。注釈をすると愛先生はいつもオシャレでべっぴんである。スキーウエアを着ている人もいるし別にそれでスタローバヤ(食堂)など行っても別に白い目で見られたりしないけれど、それはほんとうにスキーに行くとか子供と遊ぶ、とかなのだろう。コンサートに行くならぜひオシャレに。

帽子の上に、ダウンコートのフードをかぶる。または厚手のスカーフやマフラーでおでこと耳に空気が入らないように覆い、さらにコートのフードをかぶる。ロシアでダウンコートを買うと、フードにはモコモコの毛皮がついていて、道行く女性たちは皆ライオン丸となる。

ロシア人女性は日本人女性と寒さに対する皮の耐性が全然違うと思われるので、彼女たちのようにジーンズ一枚や薄いストッキングにスカートで出かけると風邪をひく。友人で一冬に3回膀胱炎になった人もいる。トイレもがまんしないこと。聖堂など観光地で一見観光客に貸し出していなくても聞けばかしてくれることもある。寒いもんねえ、と。

ブーツにはモコモコの中敷きをいれる。あるいはフェルト製のものが、道端や駅前に御祖母ちゃんが座って売っている。道路からの雪の寒さを阻止するのと、ブーツが濡れてきた場合時間稼ぎをするため。つま先が冷えると動けなくなる。

携帯も持たず、カフェやバス停から遠く離れたルートを歩かないほうがいい。雪が突然吹雪になったり、あるいは風の冷たさで手や首元を冷やしてしまい、体温が突然下がると冗談ではなく命の危険を感じる。



−15℃〜−20℃
モンベル社のダウンコート。友人男性もモンベルのコートを持っていたのだが、「この1段上の厚さを買ってしまうとエベレスト登山用となり、見た目がタンクみたいになる」一歩手前の厚さのものを買っていた。スキーウエア―や、あるいは持っているダウンコートの下にユニクロのウルトラダウンなどを重ねるか。−20℃の中央アジアに出張されていたロシア語の恩師K先生(男性)が「いつものコートを着ていた」と仰っていてえ!?ほんとうに?と疑った記憶がある。

手袋を外していると数分で手が凍てついてくる。私はコレを基準に今日は−10℃以上なのか、以下なのか判断している。
携帯の操作が長い時間できない。むしろ携帯やモバイルルーターは冷えすぎると動かなくなってくる。外出ルートは事前に調べておくこと。カメラも冷やさないこと。鞄にぽうんと入れておくと寒さにやられるのでコートの胸元に押し込んでいた。

くつした

五本指靴下に普通またはモコモコの靴下を重ねる。五本指靴下はもちろんロシアにはうっていない。これもロシアは地下鉄の駅前で可愛くて立派な毛糸の靴下をいっぱい売っている。

ソフトのコンタクトレンズ

ソフトのコンタクトレンズを持っていく。ソフトの保存液は薬局で買える。自分の度数を知っておけば駅や高級スーパーで自動販売機、コンタクトレンズ専門店で使い捨てのものが売っている。

眼鏡でもいいのだが、道から突然バスに乗ったりすると曇って何も見えなくなる。ツルが突然緩むので眼鏡用ドライバーがほしい。

ハードレンズの保存液は売っていない。ハードレンズも時々着用していたが、外出先のカフェなどで目を洗いたいときに水道水が濁っている場合がある(少なくとも飲用水ではない)のでロシアにおいてハードはそもそも向いていない、という結論に達した。

マフラー

ヨレヨレしたものではなく、幅広で、鼻と耳を覆うことのできるしっかりした形のものをもっていく。大判のスカーフも、おでこや耳、首を覆ったり、教会(ロシア正教)に入るときに髪を覆ったりできるので、持っていると便利。

ブーツ

ジーンズの上からふくらはぎまですっぽり覆われるもの(タイツを重ね履きするかもしれない可能性も考えてサイズを選ぶ)。店に行って革のブーツのサイズを決めると、おばちゃんが力に任せてふくらはぎ部分をひきのばしてくれるらしい。

もしくはくるぶしと内側にボアのついた、スノーブーツ。

二つはいていたけれど、一つはサンクトペテルブルグ市内各地にOKЕЙというホームセンター兼スーパーがあって、そこで「-15℃まで耐えられます」というごついのを買った。裏はもちろんごつごつしているもの。

もう一つは日本で5000円ぐらいで買ったUnited Colors of Benetton。

くるぶしにボアがついている。少し大きめのサイズを履く(厚い靴下をはくため)。

−20℃〜−28℃ 
1月頭にムルマンスクにオーロラを見に行ったときに、この気温となった。あるいは1月中旬のサンクトペテルブルグは−27℃となった。睫毛が凍る。手袋なしは3分位まで。

ズボン下またはタイツ+ジーンズ+モンベル社の登山用ダウンズボン。ハラマキ。冬山用の厚い肌着をきたり、ユニクロのウルトラライトのダウンベストの上からダウンコートを着る。手袋はスキー用のが望ましい。旅行者で外で順番待ちをしている人などは鼻と口を覆うスキー用のマスクなどをしている人もいる。カップルは大抵抱き合って順番待ちをする。タイツ+ジーンズで、ハラマキもカイロも入れずに出歩いていた友人はさすがに風邪をひいていた。

用がなければ一人でウロウロ散策に出歩かない方が良い。誰かと一緒か、あるいは危なくなったらすぐに通りがかりの近くの人に言うこと。この際誰でもいい。

家にいてもセントラルヒーティングがまわっているハズではあるのにとにかく寒くて、家の中でもダウンを着て、湯たんぽを抱えて生きていた。寮だと壁に体や頭をくっつけて寝てはいけないという。凍る。そうでなくても隙間風が強いので目張りをする。

暖房器具をホームセンターで買うならオイルヒーター。オイルが機械の中にあらかじめ入っていて、電気をつけるとオイルが熱くなるもの。日本みたいに温風が噴き出すタイプは売っていない。サンクトペテルブルグだと地下鉄の青線、пионерская駅前の巨大なホームセンター兼スーパー&シティーモールがある。メトロで行けて便利。

知人Aさんの2人のお嬢さんたちは、この時期大きなペットボトル(飲用水5リットル入りとか)にお湯をいれて、毛布をかけて、”こたつごっこ”をしているという。

1月も下旬になり、−15℃位になったころ、友人のロシア人の男の子からメールをもらった。

「はるか、いちばん寒い季節が過ぎました。散歩に出かけましょう。」