サンクトペテルブルグ国立大学付近、エルミタージュ美術館前の宮殿橋を渡ったところに「クンストカメラ」Кунсткамераという博物館がある。

そこにどうしてもホルマリン漬けのヒトの奇形児標本を見に行かなければならないというミッションがあり、今日吹雪が止んだので無事に遂行できてちょっとほっとした。

ロシア最古の博物館で、18世紀頭にピョートル大帝がつくったという。


奇形児たちは奇形だからではなくおそらく首をちょん切られてホルマリン付けにされたことによる苦悶の表情で、博物館自体は撮影自由なのだがとても撮れなかった。(遠くからなんとなく雰囲気だけ撮らせてもらったそのホルマリン漬け胎児たちと、鮭の標本)。

この博物館の存在は去年の早い時期にルームメイトに教えてもらって知っていたし、通学路だったのだけれど今に至るまで行く機会がなかった。でも先日K兄の記事を読んで、ここに人間と動物の標本があると知って以来どうしても来なければいけないような気がしていた。

博物館という存在自体はほんとうに小さいころから母が上野の国立科学博物館に熱心に連れて行ってくれていた。常設展はもちろん、『楼蘭の美女』(ミイラ)、『人体の不思議展』、夏休み中に開催されたものはほぼ行っていると思う。

だから私はそのへんのオンナノコよりも所謂博物館のキモチワルイもの(と言ったら標本やミイラたちに失礼なのだが)にたいしてかなり耐性がある方だと思う。

1階をさああっと眺め、2階のその部屋まで到達し、ホルマリン漬けの顔たちの苦悶の顔をひとつひとつ、慰めてゆくうちに、ああ、だからどうしても来なければならなかったのか。と納得した。むしろ顔すらもない標本もあった。

あるいはからだ一つに頭がふたつ、あたまふたつがつながっていたり、からだふたつがくっついていたり。

ベトちゃんドクちゃんみたいなたくさんの子たちが産まれ、彼らは声も上げずホルマリン漬けにされていったんだろう。ベトちゃんドクちゃんはむしろ切り離せただけよかったのかもしれないし、あるいは手塚治虫氏(の『ブラック・ジャック』だったと思う)の漫画にあったようにそれすらも医学のエゴかもしれない。

それにしてもこの極北のサンクトペテルブルグによくもまあ、あんなに、バリの祭祀の面や中国の蛸や中央アジアの秤やらイスラムの本やら、イランのくさりかたびらやら、日本の雛人形やら、そろえたものである。

Кунсткамера  http://www.kunstkamera.ru/

住所 Санкт-Петербург, Университетская наб., 3

英語住所 University Embankment, 3, Sankt-Peterburg, 199034

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